虫の知らせ

Takenori自身がこの記事を読み終わるまでにかかった時間は約5分です。

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夢を見た。

夢の中で見ている出来事が終わらぬままに尿意で目が覚めたのは、朝の4時38分であった。

この時間帯。いつもなら用を足して、そのまま顔を洗いストレッチや筋トレをするところだが。

今日3月3日はそうじゃない。

ある検証をしてみようと思い立ち、こうしてブログを書くことにした。

今、3月3日の朝5時2分。

今日と言う日に、人が一人死ぬかもしれない。

そんなことを思わせるような、そんな夢であった。

夢の中で

部屋が幾つもある大きな家の中を、冷静にいようとする反面、体には血がたぎったように、ある一人の人間を血眼になって探す人間がいた。

家の中は荒れていた。

ある部屋には、倒れたままの一人の人間がいた。今から人を一人殺そうとしている人間を育ててくれた女性であった。

いつか、こんなことがおこるかもしれない。しかし、ついにそのときが来たか…。

そんな光景を目の当たりにしたことで、一つの決心とともに小さな火が心に灯った。灯ってしまったのだ。

女性が倒れているその様を見て、何があったのかを容易に想像することが出来たその人間は、考えるよりも先に体と体全てに宿る細胞が動き出していた。

この世に産まれてからそれまでを生活してきたその、構造を知り尽くした家の中全ての部屋を、完璧と言えるルートである一人の人間を探し尽くした。

それでもあいつはいない…。

部屋を廻る途中で、いつ遭遇するかもわからないあいつとの対峙に備えて、子供の頃にあいつに買い与えられた金属のバットを利き腕である右手に持ちギリギリと強く握った。

家の外にあいつの気配を感じた。車で出かけていたあいつが帰ってきた。ドアを閉める音でわかる。

あいつを探していた人間は一目散に外へと向かい、その視線の先に目標を捉えた。

今から何をされようとしているのかまるで知らない、そして思いもよらないような顔持ちと様子で、のうのうと家の方へ向かってくる無防備な一人の人間。

しめた、と思った。これからおころうとしていることに、ざまあみろと思った。

金属バットを持った裸足の人間が自分に向かってきているのがあいつの目に入ったようだ。

しかしもう、この距離にまで縮めているなら逃がさない。

そう思いながら、全速力で走って向かっていたその助走の力を使いつつ、右手に持った金属バットを、あいつ目掛けて振り下ろした。

当たった…。

それでもあいつは膝を着くこともなければ倒れることもなく、よく見知った人間から金属バットを力の限り振り下ろされたということが、一体何を表そうとしているのかを察知したように逃げ出した。

殺せなかった…。殺せなかった…。

金属バットを持っていた人間は、そう思った。

それなら、2発3発と殴ればいい。息の根を止めるまで、この手で殺したことを確認できるまで、右手に持った金属バットを振り下ろしてやれ。

一瞬、時間にして僅か1秒と経たない時間ではあったが、体が硬直してしまった。

その隙に自転車が置いてあった場所へ、まんまと逃げることに成功したあいつは、慌てふためく様子もなく自転車に乗り込み、逃げることに成功した。

走るのが得意な人間でも、命の危険を察知し、しかも自転車に乗り込み全神経を注いで逃げる人間を追いかけるのは無謀だと察知した。

ごめん、お母さん。あいつを、父親を殺せなかった。

父親が乗った自転車が置かれてあった場所まで追いかけてきていた僕は、その場に立ち尽くしたまま、思考が停止した。

そして瞬きをした瞬間、それまで眼前で繰り広げられていた出来事は夢だったと認識した。

現実

殺せなかった。

夢だとわかった瞬間でも、そう考えている自分がいた。

つい、数十分前の感情、記憶だからそれは間違いない。

ふと思い出した。現実でも、あの日僕は父親を殺しはしなかった。殺せなかった。

母親が体を張って止めに来たからだ。それまで何年も、何年も、何回も何回も痛めつけられていたのをこの目で見てきた母親の、小さなその体を、父親の体の上に乗せることで、殺そうとしている僕から父親をかばうようにして見せる母親の、その姿。

理解が出来なかった。

お前も、この男に死んでほしいと、そう願っていたのではないのか。

お前を、二十年近くもの間痛めつけてきたこの男を、一歩間違えば死んでいたかもしれない程に暴力をふるってきたこの男を、その小さな体で守ろうというのか。

母親は狂ったように動きながら僕を止めた。

人生を台無しにせんといて。

止めるためのスイッチが壊れた機械か人形のように、ただひたすらに、同じ言葉だけを繰り返す母親の姿がそこにはあった。

その出来事は、時間にすれば10分にも満たなかったかもしれない。

その出来事が起こったその日、友人が家に来ることになっていた。

幸か不幸か、丁度その出来事が起こっている時間に友人も到着したのだ。

原因はわからないが、明らかに異常な事態なことだけはわかるその様子を見た友人は、初めて見る僕のその異様な姿を見てどう思っただろうか。

友人の家の隠れた事情を垣間見てしまったことを、どう思っただろうか。

母親は、父親を守ることで、僕の人生を守った。

友人は、骨が砕けるかと思う程の強い力で僕の手首を握って放さなかった。

僕の体と意識に宿った明らかとも言える渾身の殺意は、母親と友人の行いによって、次第にその様子を隠していった。

とりあえず身内を呼ぶことを冷静に促してくれた友人に言われるがままに、父親の母親(祖母)と父親の姉夫婦、そして腹違いの兄と姉を呼んだ。

深夜0時を廻っていた。

虫の知らせ

もう少しだったのに。

夢から覚めて数分経った僕の心には、そんな感情が宿っていた。夢の内容が強烈なものだと、その夢は中々忘れることが出来ない。目が覚めた瞬間に忘れることもあるくらいに、夢というものは不安定な存在だ。

それでも、この夢は、恐らく今後数年間は忘れることがないだろう。そしてそんな夢を見たことで、僕の心と頭にある一つの予測が立った。

虫の知らせ、というものがある。

自分にとって近しい誰かの生が終わろうとしているとき、それを予感させる出来事が起こる、霊感や第六感と呼ばれる類のあれだ。

こんなことを書いているこの瞬間に、思い出したことが一つある。

今日という日に、僕が生まれ育った町に病気の療養のためにと帰ってきている友人と会う約束をしている。

生まれ育った町には、まだ父親が住んでいる、かもしれない。

父親と顔を合わせてしまうかもしれない。

あの日からこれまで、心の中には、

「いつか顔を合わすことがあれば、その時は」

と考えていた自分がいることを、誰よりも理解している。

生まれ育った町に向かったとして、そこで僕が父親と顔を合わす確率は、ほぼ0%に近いだろう。

でももし、顔を合わせてしまったら。

僕は冷静でいられるだろうか。

もう死に行く時間しか残されていない一人の人間を、わざわざ殺して罪に問われることもないということは、深く理解してはいる。

だから、今日見た夢と、夢に関連して起こるかもしれない出来事は、僕が生きる人生の外の事だと理解するようにしよう。

もし、父親が死んだとの知らせがあったときには、

「虫の知らせってあるんだなぁ…」

程度に考えればいいのであって、自分にも霊感や第六感がほんの少しは宿っているんだな、とヘラヘラすればいいだけの話だ。

僕は狂信めいたカルト信者ではない。

自分のために、自分の人生は自分で守り切り開いていかなくてはならないのだ。


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